性売買や性暴力被害者のその後についての発信

ここ数年ずっと考えていたことを書いています。ご支援いただければうれしいです。
石川優実 2024.04.03
誰でも

自分なりの決意とお願い

重い話ではありますし、性被害のことも書いてあるので(しかも詳しく書きます、フラッシュバックの可能性がある方はここまででやめておいていただけたらと思います。大丈夫な方は引き続きどうぞ。

先日、フランスで性売買が禁止されるに至った経緯などを伺いました。(全然知らなかった。なんならフランスが性売買禁止だということも知らなかった。)

その大きなきっかけは、フランスで売春をしている女性の多くが、それ以前に性的虐待や性暴力の被害に遭っているという調査結果が出たことだったそうです。

これって、私からしたら「そりゃそうだろう」という話なんです。

ここから私の個人的な過去の被害についてのお話になります。

私は16歳の時にアルバイト先で性被害に遭いました。今考えれば違法なアルバイトだったのですが、当時は普通にバイトの求人誌に載っていたものだったので応募しました。

求人には「マッサージ店のテッシュ配り」ということで、高校生OKだったのです。

で、そのマッサージ店というのが違法だったようで、私は知らずに「マッサージの方もしてみる?」と言われ、本当に普通のマッサージのお店だと思っていたのにどうやらそうではなかったらしく、初めてのお客さんのマッサージ中に突然挿入されてレイプされました。

で、当時は私はこれが被害だとは分からなくて、そのまま帰りました。これがレイプだったと理解したのは、2017年以降です。

で、そこまではまぁ性暴力の話なのですが、私はこの数日後に、この違法のマッサージ店が本格的に風俗のお店を出すということで、高校生でありながらそこに働きに行くようになりました。

なぜなのかは、自分でもわかりませんでした。そこから20代後半まで、性産業から抜け出せませんでした。(グラビアの仕事もそのひとつだと思います)

嫌だな、と思いながら私はそこに行くしか選択肢がありませんでした。

そうやってレイプの被害を、被害ではないものにしようとしたのだと今は思います。

そこから私の性売買に関わる人生が始まります。メンタルもどんどん壊れていくことになります。それからやっと抜け出せたのが、2017年の#MeToo以降です。

自分にこういう経緯があったので、フランスの調査の話は別に意外なものではありませんでした。ただ、日本ではそういった調査がほとんど行われていないのではないか、と思います。

こういった調査がこれから先行われていくように、私は引き続き、子どもの頃に性暴力から性産業に入って行ったこと、そこから今日までのこと、そしてこれから先のことを、きちんと文章に残して、そして伝えていきたいと考えています。

当事者の声が圧倒的に少ないと感じるからです。

性産業とは関わりのない性暴力被害のその後のこともですが、やっぱり精神的に障害を負ってまで自分のことを伝えられる人が多いとは思えません。風俗で働いていたことを言うことだって、簡単なことではないです。私はヌードになっていたり被害をすでに告白していたりで、そういうハードルが少し低くなっている部分があると思います。

「セックスワーク論」は、性産業で働いている人の権利を守るというところは私も賛同しますが、その人たちの精神面、積極的同意でない性的行為によって受けるダメージ、やめた後の精神障害について、深く考えられているとは思えないです。しかし、今のフェミニズムはセックスワーク論が主流になっていて、反性売買を語る人が「セックスワーカー差別」をしているかのように言われて、そもそも性産業というものの是非についての議論が進まなくなっていると感じます。

  • 風俗の客のほとんどが男性に偏っていることはジェンダー平等の観点からどう考えるのか 

  • 性産業で働いた人のその後の精神障害についてどう考えるのか 

  • 「性的サービス」の提供なら積極的同意でなくても良いのはなぜなのか 

  • そもそも「性的サービス」と「性的行為」の違いは具体的になんなのか(行為としては同じはず)

  • 「性的な行為」は、刑法でも暴行罪などとわざわざ分けて同意を取ることが求められたり、様々な「同意」を取る行為の中でも特別にされているはずなのに、なぜ「セックスワーク」になると「他の行為と同じ」という理論になるのか(他の行為と同じなら「性的」同意なんて必要ないのでは?)

  • 「性的同意はお金で買えない」というと「セックスワーカー差別だ」と言われますが、ではセックスワーカーの同意はセックスワークをしていない人たちと同じように取られているのだろうか?(自分が取ってもらえていたとは到底思えない)

  • 「性的サービス」の提供なら、金銭が絡んだ性的行為をしたその人は精神的ダメージがないと考えられているのか?

私にはこういった疑問があります。

自分が最近ずっと「性暴力の被害にあった人間のその後のケアのことが全然考えられていない」という発信をしていますが、そことも繋がっているような気がします。

いくらその場で「お金をもらうのだからこれは自分で決めている」と自分を納得させようと、自分がやりたくない性的な行為というのは、性被害と同じように自分の心を傷つけました。

「セックスワーク」という言葉は確かに、一時的に自分を救いました。あれは仕事だったんだ、恥ずべきことではないんだ、私は汚くなんてないんだ。そう思わせ、自分には価値があると思い直させてくれました。そういう面では悪くない言葉だと思います。

が、同時に、風俗で働いたりグラビアの仕事をする中で自分が負った傷をすっかり覆い隠してしまったとも思います。

望まない性的な行為をするしかなかった時の傷を自覚することは、とても難しいです。でも、自覚しないと先に進めません。回復することができません。

「仕事だったんだから、傷ついていない」と自分を思わせられれば、その時をなんとか生きることができます。が、その傷は治らないまま、自覚されないまま、どんどん大きくなっていき、いつまで経っても謎の苦しみから逃れられません。

私は、セックスワーク論を支持する人たちが本当に当事者のそこまで考えてくれているのか、というととてもそうは思えません。冷たいなと思います。

「差別しないこと」が目的になって、「なぜ差別をしないのか」が考えられているのかな、と考えています。

私は幸い、自分の経験をこうやって文章にすることによって、負担な時もあるのですがある程度回復や気づきにつながることがあります。なので、こうやって記録して発信して、いつかきちんと日本の性風俗で働く女性たちの過去の被害やその後の生活のことについて、調査に繋がって欲しいと思います。それをしてくれる研究者が現れてほしいなとも思います。

そこでお願いです。こういったことを書き続けていきたいので、ぜひサポートメンバーになっていただきたいのです。

16歳で被害に遭ってから、今日までずっと、大変でした。今症状が出ているのは、やっと自分にとって安全な環境になったからだとは思います。それなのに、こんな症状で引き続き大変です。繰り返しの性暴力の被害の影響は、本当にキリがないというか、終わりが見えないというか、そう感じます。

私は2021年に出したエッセイ「もう空気なんて読まない」の「はじめに」で、こう書きました。

当時は、自分ではない、他の誰かで生きているような感覚だった。「今の私は本当の私ではない」。それはわかっているのだけど、いったいなぜこんなことになっているのかはまったくわからなかった。

今、PTSDやトラウマについて学ぶ中で、これはおそらく「解離性障害」、その中でも離人症だったんだろう、ということがやっとわかりました。

離人症
自分が自分であるという感覚が障害され、あたかも自分を外から眺めているように感じる曖昧な状態です。自己が分離し二重化しているために生じる現象だといわれています。

こういう症状の中で決めた私の選択を、「主体的な選択」と言われるのは本当につらく悲しいです。被害にあっていなかったら、こんな選択していないと思う。それを「主体性を大切にする」と言って助けてくれないのは、子どもや性暴力被害者を見捨てているようで私には耐えられません。

15年ほど私は、自分として生きてこられませんでした。取り戻した今は、その後遺症に苦しんでいます。あの時に戻りたくないし、早く健康になりたいです。そして、私のような10代、20代を過ごす女性をもうこれ以上増やしたくないんです。本当にずっと、色のない世界というか、暗闇の中を別の誰かで生きているようでした。死んでいるように生きていました。今自分を取り戻して思うことは、生きているってことは本来こうも「自己」というものがはっきりと存在していることだったんだ、ということです。

私が差別をなくしたいのは、全ての人が自分として生きる権利があるべきだと思うからです。

もし、皆様の中に私の発信には意味があると思ってくださる方、性風俗について思うことがある方、セックスワーク論には賛同はできないと考えている方がいらっしゃいましたら、どうかサポートをお願いできないでしょうか。

どうか、このことを他人事だと思わないでほしいんです。

私は9月から働けなくなって、どうしようと思った時に、やはり性産業でお金をなんとかする、ということが頭をよぎりましたし、実際に仕事を探すとそういうものばかりが出てきます。

性産業はすぐに働き始められること、(すぐに面接してくれる・そしてそのまま働ける)、働いてすぐに日払いでお金がもらえること、仕事によっては住む場所も与えてくれます。

こういった仕事は他にはそうそうないと思います。PTSDやうつ病を抱えている人間からすると、「予定を決める」ということがすごく難しくなるので、性産業は働き始めるハードルが他の仕事に対してとても低いんです。が、性暴力で傷ついたまま性産業に入ることの深刻さをもう少し考えてほしいんです。

例えお金が手に入っても、一生回復しない精神もセットになってしまうかもしれません。

性産業に入ったことのある方ならわかると思いますが、「女である」というだけで、歳をとったって、太っていたって、一般的に綺麗じゃないと言われるような容姿だって、働けます。「お前なんか需要がない」と言われながら、需要がないから値段を安くしろ、需要がないからといって過激なことをしろと言い、何がなんでも勝手に価値を作り出すのが性産業です。

私はブスだから服を着ていては需要がないから水着になれ、水着ですら需要はないから脱げと言われ続けたし、お前には価値がないから脱げと言われ続けました。

セックスワーク論を支持する人の中には、「自分には向いていない」「とてもじゃないけど大変な仕事できない」みたいなことを言う人もいますが、自分には向いていないし、とてもじゃないけどそんな大変な仕事できないと思っているのに働くしかなくなる、それしか選択肢がないと思わされる、そういう女性がたくさんいるのが性産業です。つまり、いつ自分も働けないと思いつつ働くしかなくなることになるのか、このままじゃ分からないよ、ということです。仕事として認めると言うことはそういうことです。他人事じゃないんです。私はもう絶対に、お金のために知らない人や自分が好きじゃない人と性行為したくない。次にそんなことしなきゃいけなくなったら、私は多分精神が持たずに死ぬと思います。

そんな人が一体どれだけいるのでしょうか。これは私だけの話ではないはずです。私は、性産業をなくすべきだと思います。

このことに体力を使うことができたら、とても助かります。

クラファンに多くの方にご協力いただきました。コーヒー焙煎やカフェの仕事は、いずれ性被害を受けた女性や、性産業から抜け出したい女性たちで運営していくことが目標です。精神的な障害を抱えていても、働ける場所が欲しい。もう性売買せずに生きていきたい。そう思う女性たちの安心して働ける場所にしたい。

ご検討ください。このレターでは、毎月500円からサポートを受けております。(女性はLINEのオープンチャットに入っていただくこともできます。)

また、同じような思いで活動されている方とはぜひ連帯したいです。ご紹介くださったり、ご連絡ください。セックスワーク論を支持している方とのインターネットでのやり取りは難しいと考えています。なので、この記事はネットでの拡散は控えていただきたいです。

長くなりました。どうぞよろしくお願いいたします。

石川優実

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