【連載】私が私を取り戻す日記④自分のことを好きになってくれない人ばかりを好きになる
この連載は、普段の日記とは別に性暴力に遭ってから今日まで、私が私を取り戻すために考えてきたことを綴っています。
個人的な初体験の話とかも絡んでるので、こういう話が嫌いな方はスルーしてくださいね。
私、なんか昔から「自分のことを大切にしてくれない人を好きになる」みたいな傾向がありました。つまりセフレみたいな関係にされて、その人のことを好きになるみたいな。性行為に限らないんですけどが、自分のことを雑な扱いをする人ばかりを好きになる傾向があって。
逆に、好きと言ってくれる人のことを好きになれることがほぼなかった。
何かトラウマがあるんだろうなとは思っていたんですが、さすがに30代になって落ち着いていました。
でもなんか最近またその傾向が再発してて、好きにまではならないけどちょっと同じような気配を感じたのでちょうどトラウマ治療で通っていた心療内科のカウンセラーの心理士さんに相談しました
すると、
「石川さん、初体験ってどんな思い出がありますか?」
と聞かれて・・・
私の初体験、中3の時に1個上の同中の先輩だったんだけど酷くて。一応、本当に一応付き合おうとは言われたんだけど、デートとかもしたことなく家に呼ばれてセックスだけする、みたいな相手にさせられて、あとから友達から聞いたら4股だったと。
今では笑って話せるけど、 当時それなりにやっぱ傷ついてきました。友達に4股だと聞いた瞬間のこと、すっごくはっきり覚えていてよくフラッシュバックする。が、その時はなんとなく傷ついちゃいけない気がしていました。
なぜかというと、自分の中に「そんな男の人を本当に好きになってる私の方がみっともない」とか「そんな相手にさせられて、魅力がないからそういうことされるんだ」とか、「男の人ってそういうものだからいちいち傷つくとかあほみたい」みたいな気持ちがすごく大きくて、自分がそういう扱いされて悲しいとか傷ついたとか、怒る気持ちよりも、なんか自分を責めたし恥ずかしかったし、傷つかないようにしたんですよね。
その話をしてて、今はそんなことする男がくそだと分かるし怒れるんですけど、当時はこんな感じでしたって話をしていて、よく考えたら私この話、ちゃんと人にしたことなかったなって思ったんです。
あったかもしれないんだけど、笑い話みたいな感じでしかしたことなくて、傷ついた文脈ではしたことなかったのです。
そうしたら、心理士さんが教えてくれたのは
「ショックなことがあった時に適切に処理できない、つまりきちんと傷ついたり悲しんだりできないと、そのトラウマを無意識に克服しようと頑張っちゃうことがある。多分石川さんは、頑張ってそのトラウマを克服しようという脳の働きがあって、別の人でなんとか解消しようとしてたのかもしれないですね」ということ。
それを聞いて、「そっか、私あの時めっちゃショックだったんだ」と改めて思いました。
初体験が4股男でそんなやつだったなんて本当に悲しかったし、可哀想だったなと思った。だって中3ですよ?今の私とは訳が違うし。
こうやって、今になってしっかり傷つくことができました。傷ついて自分を認めてあげる、というのはこれかな。一回少しだけ泣いて、
「辛かったね、あなたは何も悪くないよ」
と自分に声をかけてあげたりした。
そしてその少し後不思議なことに、なんでこの人と仲良くしてんのかなあ、雑な扱いされてるのになって男の人と次々にすんなりと縁を切ることができたのです。ほんと無理せずに、自然に無理だわ~って思えた。トラウマ治療すげーと思った。
トラウマの心の動きみたいなものはある程度本読んだり勉強したりでわかっていることもあるんだけど、きちんとトラウマ治療を自分が受けることは当然なのかもしれないけど全然違うと思いました。
やっぱちゃんと専門家の力を借りて、「自分の治療」をすることってすごく大事だと思った。
ここからは私の考えなんですけど、私みたいな経験してる女の子って少なくないと思うんですよ。男に都合のいいように身体だけの関係にされる経験。少なくとも性別逆よりはあると思う。
で、もしそういう女の子が当時の私みたいにきちんと傷つくことができなかった場合、「自分のことを好きになってくれない人ばかり好きになってしまう現象」に苦しむのではないか、と思って。
でもこの「自分のことを好きになってくれない人ばかり好きになってしまう現象」って、結構女性あるあるのような気もしていて。
もしかしたらそれの多くは、過去のトラウマを解消しようとしているのであって「好き」ではないのかもしれない、とか思った。だから苦しいし執着しちゃうし、心温まる安心安全な、多分本来の意味の好きとか愛する、とは程遠いのではと思ったり。(まぁ好きとか愛とか事態が曖昧なものですけどもね)
あともうひとつ、心理士さんが教えてくれたのは、人って他人に話せなかったことがトラウマ化しやすいらしいです。自分の素直なその時の悲しみとか傷つきとか怒りを、友達とかにわーっと話せていたらトラウマ化しづらいんだって。chatGPTとかでもいいかもしれない。(ここで変な相手に話してしまうと更なるトラウマになることもあるから注意が必要)
多分言語化すること、そしてそれをそのまま受け入れてもらえることが大切ということなんだとは思うんだけど、確かに過去の性被害も、初体験のことも人に悩みとして話せなかったんだよね。
女子同士の「おしゃべり」は、女性たちがトラウマを抱えずに生き抜くために生み出した素晴らしいものなのかもしれない。
ここ一か月くらいで、1年半かけてきたPTSD治療の効果をすごく実感しています。すべての被害者の人が適切な治療を受けられたらどれだけ社会が変わるだろうか・・・すっごくすっごく楽になりました。
今回のことは「性被害」ではないけれど、なぜこんなに女性が身体のみの相手として扱われる率が高いかというとやっぱり「女を金で買える」とか、「女性は性的なもの」として見ている社会が影響していると思います。そうやって扱われても、それが当然すぎて素直に傷ついたと思えない、蓋をしてしまうことが、その後被害に遭いやすい環境に絡めとられていくこともきっとあると思う。
もちろん性行為っていうのは、私はみんな自由にすればいいと思う。セフレというものそのものにどうこう思うこともない。ただ、そこには当然相手をただの性処理の相手として扱わないというか、もの扱いしないというか、最低限の敬意みたいなものは必要だろうと思う。相手がその関係性に納得していないのならだめだよね。
PTSDの治療としてのトラウマ治療はとても大切だけど、すべての人が「自分の過去の体験が今の行動に影響を与えている」ということには自覚的になれたら、色々変わることがあるのではないかな、と感じます。
今回は私のトラウマについてのお話でした。こうやって、一見大したことのないような経験でも、実は心の奥底で傷ついていてその後の行動に大きな影響を及ぼすことって、あるんですよね。
そしてトラウマというのは、多かれ少なかれ誰にでもあるものだと思うのです。人生の中で、ショックなことがなかった人っていないですよね、きっと。
このレターは私についてですし、人によって全然違うものではありますが、トラウマというものに少しでも興味を持った方はぜひ5月18日のイベントを聞いてほしいです。
詳細はこちら↓
お待ちしております。
石川優実
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