複雑性PTSD、単回性PTSD 違いと知ってほしいこと

複雑性PTSDの治療中に感じていること。
石川優実 2024.07.01
誰でも

こんにちは。石川優実です。

ここ数日PTSDの症状がひどくて落ち込んでいたのですが、この機会に知ってほしいこともあるなぁと思ったので、いつもの日記とは別に、自分の整理のためにもレターに残しておこうと思います。

PTSD、複雑性と単回性の違いって?

調べると色々なサイトが出てくるので、こちらに載せておきます。

チャットGPTにまとめてもらったのがこちら。(ほんと便利だ・・・)

複雑性PTSD(Complex PTSD)と単回性PTSD(PTSD)は、どちらもトラウマに関連する障害ですが、発症の経緯や症状の範囲においていくつかの重要な違いがあります。

単回性PTSD

単回性PTSDは、一般的に一度の非常に強いトラウマ体験(例:自然災害、交通事故、暴力事件など)に対する反応として発症します。この障害の主な特徴には以下があります:

  • 再体験:フラッシュバック、悪夢、侵入的な記憶など、トラウマ体験を再び体験するような感覚。

  • 回避行動:トラウマに関連する場所、人、活動を避ける。

  • 過覚醒:過度の警戒心、過敏な反応、睡眠障害など。

  • 否定的な思考と気分の変化:自己や他者に対する否定的な感情、興味の喪失、疎外感など。

複雑性PTSD

複雑性PTSDは、長期間にわたる反復的なトラウマ(例:児童虐待、家庭内暴力、戦争捕虜など)に対する反応として発症します。この障害は、単回性PTSDの症状に加えて、以下のような追加の特徴を持つことがあります:

  • 感情調節の困難:強い感情の波、怒りの爆発、持続する悲しみなど。

  • 自己概念の変化:強い恥や罪悪感、無価値感、自尊心の低下。

  • 対人関係の困難:他者との信頼関係の構築が難しい、孤立感、他者への過度の依存や回避。

  • 解離症状:現実感喪失、自己分離感、トラウマ体験からの切り離し感。

主な違い

  • 発症の原因:単回性PTSDは一度のトラウマ体験に関連し、複雑性PTSDは長期間の反復的なトラウマに関連します。

  • 症状の範囲:複雑性PTSDは、単回性PTSDの症状に加え、感情調節の困難や自己概念の変化、対人関係の困難などが含まれます。

これらの違いを理解することで、適切な治療や支援を提供することが可能になります。複雑性PTSDはより多面的な治療アプローチが必要とされることが多いです。

知ってほしいこと

私が知ってほしいな、と思うことは、複雑性になると特に日常生活への影響が大きいということです。また、「性格の一つ」と済まされることが多いのも現状だと思っています。

最近やっと自覚したのですが、例えば舞台の稽古である稽古場に行ったとき、過去に性暴力を受けていた時期にも使ったことのあった稽古場だった。そこからフラッシュバッグが止まらなくなり、フリーズ、シャットダウン状態になって今の稽古に参加が難しくなった。

こういうことがあったときに、今の自分は性暴力にあったことも複雑性PTSDであることも自覚しているので対処法や説明がしやすいのですが、自覚のないときはただ単に「なんか具合が悪くて今日は行く気になれない」くらいの認識で、自分のことを怠け者でだめな人間だと思い、ただただ自分を責めるし、相手側からも「きちんとしていない人」という評価になるだろうと思うんです。

フラッシュバッグはこういう直接的ではないことでも全然起きちゃうし、その後の具合の悪さ、身体の動かさなさっていうのは表現が難しいです。

で、性暴力自体自覚が難しい、自分のPTSDの症状の自覚はもっと難しい。
性暴力被害者の約半数がPTSDの症状があると想定される中で、一体どれだけの女性がこのような日常的な生きづらさで悩んで、自分を責め続けているのだろうか、と思います。

いわゆる「メンヘラ」と言われて

10年くらい前まで、私は自分のことを「メンヘラ」「かまってちゃん」だと思っていました。
他人からそう言われることもあった。

だけど、今になってわかるのは、16歳のときから性暴力のある生活を送ってきて、複雑性PTSDの症状がずっと出ていたのだということ。

今も「自分のことを誰も必要としていない」、孤立感、喪失感で苦しいのですが、この苦しさを吐露すると「『あなたはみんなから必要とされているよ』って言ってほしいんでしょ」とか、死にたい気持ちも話すと「止めてほしいんだろう」と単なる「かまってちゃん扱い」をされるのですが、そうではなくてこの苦しみからの抜け出し方をどうにか知りたい、という気持ちが心の底にはいつもありました。

どれだけ「あなたは必要とされている」とか「死なないで」と言われても、言われたところで自分の脳がそれを聞いてくれるわけがないんです。なぜかというと、複雑性PTSDの症状だから。

誰かに必要とされていないとか、誰も死なないでと言ってくれないからとか、そういうことから起こっているものではなく、被害の影響で出ている症状なんです。

なので、もし身近にいわゆる「メンヘラ」「かまってちゃん」と揶揄されるような人がいたら、その可能性を考えてあげてほしいと思います。かける言葉は、多分「そんなことないよ」とか「死んでほしくない」という言葉ではなくて、「それって症状かもしれない」という言葉がいいのではないかと思います。

仕事を飛んでしまうとか、無断欠勤が多いとか

私はキャバクラやスナック・ガールズバーや風俗で働いてきましたが、他の仕事より無断欠勤や当欠、「飛ぶ」という行為をする女性が多かった様に思います。(だから罰金制度があった)

これって、風俗だと特にですが、複雑性PTSDの症状も関係していることが多いのではないかと思います。

風俗で働く場合、本人の積極的同意がない場合がほとんどで(お金のための性行為というのは、性行為そのものがしたいわけではないので消極的同意だと思います。)確かに加害者というのは違うかもしれないですが、本人の精神状況は性暴力を受け続ける人ととても似通っているのではないかと思います。(少なくとも自分はそうでした)

そういう中で複雑性PTSDにならない方が不思議というか。キャバクラなども当たり前にセクハラとかありますし。

そういった女性たちの精神が不安定になるのはある種当然のことと思います。が、働く女性たちのメンタルケアはセックスワーク論ではめったに触れてくれていないように思います。(自覚がないことが多いという前提が共有されているとは思えない)

これはもちろん性風俗や夜の仕事で働く女性に限りません。この日本で生きていると何らかの性暴力にあったことある女性は多いと思います。

だから女性の方が「メンヘラ」も「かまってちゃん」も多いのでないでしょうか。

  複雑性PTSDの症状には、恐怖、不安、怒りなどの強い感情の他に、自己評価の低下、対人関係の困難、自己認識の歪み、感情の調整の困難、無力感、孤立感などが含まれます。 過去のトラウマが日常生活に悪影響を及ぼすことが特徴と言われ、専門家による心理療法が一般的に治療として用いられます。  

ここに書いてある症状は私は全部出ています。これによってどうなるかというと、日常の色んなことができなくなるし、人間関係がうまくいかなくなります。

自分のことを価値のない人間だと思っているので、生きるのが難しいんです。何かに挑戦することも、他人と信頼関係を結ぶことも。

そりゃあまともに仕事なんてできないよなと思います。

もともと明るくて活発な女の子でした。それが変わってしまった。

思うのは、こういったことで悩んでる女性を、無理に意識だけで変えさせようとしないでほしい、ということです。根性論でどうにかなることじゃないので。

世のなかにはそういった自己啓発が多いように感じます。

「自己肯定感とあげる」とか、「人に嫌われても気にしない」とか、そういうことをする前にまず「これは症状かもしれない」と自覚するだけでだいぶ楽になるかもしれません。

自己肯定感をあげようとしても上がらないから、人に嫌われても気にしないと思っても気にしてしまうから、余計に自分を責めることになります。それはしんどいです。

また、これらのことがあっても、治療をすればある程度回復するかもしれません。私もまだしんどいけれど、「死にたい」という気持ちは薬でまったくなくなりました。喪失感とかはまだまだだけど。だから希望ももってほしい。

あと、パートナーや身近な人との喧嘩がだいぶ減りました。お互いにこれを理解することで、「あ、今フラッシュバッグの影響でフリーズシャットダウン状態です」と言えるようになったからです。

「自分は大した性暴力にはあっていないから・・・」と思う人も多いかと思うんです。私もそうでした。でも、犯罪として裁かれる大きさと心に与えるショックは必ずしも比例しません。

今でも被害に遭った瞬間のことが突然鮮明に頭の中によみがえる、ということがあるのなら、はっきりとその瞬間のことを思い出すということがあるのであれば、トラウマがPTSDになっていることも可能性としてあると思います。

そんな中で最近「頑張った」こと

最近私は、フラッシュバッグでもう駄目だとなったときに、初めて無理しないで「これができない」と伝えて色々と変更してもらったことがあるんです。今までだったらなんとかやっていたんだけど、これは無理してたらダメだと思って。ここで無理したら、多分他のこともできなくなってしまうような気がして。

当然迷惑をかけることになります。が、それを受け入れ理解してくれる人たちだったので、甘えさせてもらうことにしました。こうやって回復に近づいていくのではないかとも思います。

これもPTSDの症状の一つなのかなと思いますが、適切に人に頼ること、甘えることが本当に難しくなってしまいます。「助けて」ということが難しいです。そんな中で状況が悪化していく人もいるかもしれません。

もう何回も載せている記事ですが、こちらのNHKの調査。

二つ目はNHKの記事の中にもある、「PTSD評価尺度」です。一つの参考になるかもしれません。

「自分には関係ない」と思っている女性たちに、少しでも気が付いてほしいと思っています。気が付くだけで心がある程度楽になることがあると思っています。

期待したいこと

私は、ここ最近はカフェやコーヒー、歌を歌ったり、こういうPTSDのことを伝えることを中心にしています。

これらは主に「ほっとした時間、楽しいと思える時間を過ごしてもらうこと」を目的としています。なぜかというと、社会運動・様々なアクティビズムの中でこういうメンタルに関する方面のアプローチはかなり少ないのではと感じているし(ゼロとは思っていないけど)、女性たちの心が回復することによって、

  • もっと社会運動に参加する人も増えるだろうと思う

  • 元気に働くことができればジェンダーギャップにも影響するのではないか

  • 自分を責める女性が減れば、適切に被害に抗議できたり、何かに挑戦するときによいパフォーマンスを発揮できる可能性があがるのではないか

  • トランス女性への差別も減るのではないか(「男性がこわい」という症状から抜けることになるので)

など考えています。

何よりも、被害に遭った女性の声を社会をよくするため、再発防止だけに使うのではなくて(それが必要であることも十分理解できますが)、やっぱり被害者本人の回復をファーストに考えられる社会になってほしいと思います。

今苦しんでいることを私が書くのは、どうか被害者のその後にもう少し光を当ててほしいからという期待です。「困難女性支援法」は、まさにそういう法律だと思っています。が、まだまだ実際に使われるには程遠いと感じています。

私が現状を書いていくことで、問題意識を持ってくれる人が増えたらいいな、と思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

石川優実

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