「勇気」を称賛する前にやることがあるのではないか

1日経って、思うことを書きます。
石川優実 2024.02.22
誰でも

報道の記事は掲載を控えます。(榊氏の顔写真が出るのが怖いから)

内容は性暴力のことです、元気のない人はスルーしてください。

***

昨日は4件ほど取材を受けました。使われるかどうかわからないですが、声をあげた立場として伝えないといけないことがあると思い、受けました。

取材を受けることも、楽なことではないです。今回の逮捕も、よかったことではもちろんありますが、被害届を出せていない多くの被害者からしたらあまり関係なく、それどころか報道でフラッシュバックがひどくなっている人は多いのではないかと想像します。

まず、昨年3月に弁護士からの被害を告発した俳優の知乃さんのニュースレターを。
ここに、自分は強く言えなかった被害当事者としての思いが代弁されていると感じました。

2年前に私は、榊英雄について声をあげました。いや、「あげさせられた」という方が正しいのではないかと思う。

私が初めて芸能界のことについて声をあげたのが2017年末。

この時、榊氏のことは書いていません。私は本当にかなり多くの性暴力にこれまであっています。(特別なこととは思っていません、多くの性暴力の被害者がそうであると思っています)「あの時のこの被害が今の症状の原因」と、単独ではない状況なので「複雑性PTSD」な訳です。

2018年から2022年の2月まで、榊氏のことはしっかりと話してきませんでした。自分自身も被害を自覚しきれていなかったことや、映画界だってそろそろ変わっていくだろうと思っていたから。私が声をあげなくたって、被害者がたくさんいたことはわかっていたから、誰かが榊のことは止めるだろうと考えていました。

だけど結局、それがなされないまま榊が性暴力をテーマにした映画を公開するというニュースを目にしました。

それを聞いて、私は告発をしました。これを自発的と思うなら仕方ないです。でも私は、勇気があるとかそんなんじゃなくて、止めるにはそれしかないと思った。この映画の公開は止めないといけないと思った。誰かが告発するしかもう方法はないと思った。今まで榊のことが野放しにされてきた中で、誰かが声をあげられる可能性は低いと思った。だから私が声をあげた。そういう経緯です。

で、あれから2年。昨日のレターでも書きましたが、映画界でハラスメントのことが話されることは増えたと思います。ジャニーズのこともあって、だいぶ業界自体が変わったと思う。榊だって逮捕された。刑法も変わった。社会全体として、いい方向に向かっているのはよくわかります。

でも、私たちは?被害者へのケアや救済は?

私がもらったケアって、「勇気を称賛します」とか「リスペクトを」っていう言葉だけだと思っています。その言葉で、被害者のその後を考えることから逃げられているように思う。

榊氏の件とジャニーズと大きく違うのって、被害者への視点がないこととあること、だと思う。(もちろん、ジャニーズいう事務所内で起こっていたことだからというのはあると思うが)

慰謝料がもらえること、羨ましいです。1800万円を少ないと抗議できること、被害者は何も悪くないということはわかっていても、羨ましいという気持ちが出てしまう。こういう自分も嫌いです。

映画界の方では、もう怖くてお芝居ができなくなってしまった俳優がどれだけいるのか、被害にあった人がその後どんな生活を送る羽目になっているのか、どれだけ困窮しているのか、働けなくなってはないかとか、病院には行けているのかとか、そういうことに焦点を当てた話し合いやトークイベント・シンポジウム、調査はどれだけなされてきたのでしょうか?

では調査を受けて解決策は?

また、誰かが声をあげる前に榊のことを解決できなかったのかの検討はどこまでなされたのでしょうか。

声をあげて、告発して、取材に対応して、はい、もういいですよ。もうあなたのことは必要としていませんよ、さようなら。十分役に立っていただきました。

もちろんこんなことは言われていませんが、そういう扱いを受けていると感じます。

私や私たちの告発は、結局「社会を良くするため」に使われたと感じます。
告発直後の是枝監督たちの声明?はその最たるものだったと思う。

被害を受けて、芝居をすることが怖くなりました。告発して、二次加害も当然のように受け、今になって複雑性PTSDとうつ病の診断を受けて、動けない日が増えました。働くことも簡単ではないです。働くことどころか、自分のご飯を用意すること、日常的な家事もなかなかできません。(調子がよいときはできる)

なんとか福祉に支援はないかと相談していますが、PTSD単独で障害者手帳や障害年金を受け取ることの難しさ、生活保護のハードル(今の生活を大幅に変えないといけない)、犯罪被害者給付金の対象にはならない性犯罪の被害届を出すことのハードルの高さ、(犯罪被害者給付金自体がまだまだ課題があるものだとは伺っています)

そして何より、「自分は被害に遭って精神病になって働けず、経済的に困窮していて大変なんです」と言い続けていないといないものとされてしまうようなしんどさ、惨めさ。

お金がないなんて、生活が大変なんですなんてそれこそ書くことに勇気がいることです。

たまにご馳走になったご飯とかをアップすると「嘘だったんだ」とか言われたり、そもそも性暴力の被害を訴えると絶対にセットでついてくる「金目当てなんだろう」という二次加害を受けすぎて、お金に困っていることを言える被害者が多いとは思えません。

だから多くの人が言えなくて、言えないから問題点として上がって来ず、解決されて来なかったのではないかと思っています。

一番の願いは、被害に遭う前に戻って健康な心と体を取り戻して、働きたいです。毎月生活ができるくらいのアルバイトでいい、8時間時給でもいいから働かせてもらえたら、ダブルワークでもして月に20万くらいなら稼げると思う。20万あれば、都内の家賃払って国民年金も国民健康保険も住民税も滞らず払って、病院やカウンセリングにも定期的に通って、少しは自分の楽しみにもお金を使えると思う。

でも、こういう自分に関係することが社会で起こるたびに体が鉛のように重くなってしまってベッドから出られなくなる私がこれだけ働くのは今は難しいです。難しいけど働かないと生活できない、だから休めない、症状が一向に良くなっていかない、の悪循環にハマってしまって、辛いです。

気軽に生活保護って言ってくるのとかも勘弁してほしい。都内で53000円の家に引っ越すことが必須になる。夜道が怖いから、宅配便が怖いから、夜誰かが侵入してくるんんじゃないかと怖いから必死で探した70000円の駅近オートロックで防犯シャッター付きの今の家。それを贅沢だと思われるのか、とまた悲しくなる。被害に遭ってなかったら、女じゃなかったらオートロックなくたって夜道だって平気で歩いて帰れたよ。

芸能界の被害に限っていうと、多くの被害者はフリーランスかと思われます。
傷病手当もなければ当然有給などもなく、障害年金が降りたとしても厚生年金じゃないと金額が少ないとか、厚生年金を払っていれば降りたけど国民年金だったから降りないとか、本当に色々なハードルがあります。

そして、こういうことを考えて訴えていくのは私がやらないといけないのか!?もちろんいなくはないんです、言ってくれている人はいるし、調べたらやっぱりたまかさんは7年も前に記事にしてくれていた。

この記事が書いたのがたまかさんだと気が付かずにたまかさんに「こんな記事があって本当にこの通りなんです!」と力説しそうになった・・・笑

性犯罪被害と支援に詳しい、目白大学専任講師で臨床心理士の齋藤梓さんは言う。
「性犯罪被害は他の犯罪と比べて年齢が若い被害者が多く、必然的に収入や預貯金が少ない被害者が多いです。また、被害の特性として被害にあったことを人に話しにくいと感じる人が多く、家族にも経済的援助を求められなかったり、労災や傷病手当などの既存の社会保障制度を申請することに躊躇するといったこともあります。 
安心な生活ができて初めて、精神的な回復が始まります。安心して生活を送るためにも、給付金などの経済的な保証は大切であると考えています」

これは7年前の記事です。

犯罪被害者等給付金も、性犯罪の場合も被害による精神的影響が該当する場合もありますし、親族間の犯罪であっても場合によっては支給対象となるよう見直しが行われるなど、徐々に制度が整っていると感じています。
ただし、これらはほとんどが、警察に届出をしていないと使用することができない制度ですので、警察に届出ができない、あるいはしていない被害者への支援は、今後も検討される必要があるかと思います。

たまかさんがこうやって当時から被害者の現状を記事にし伝えてくれていたことにとても感謝をしつつ、じゃあ今それが改善されているかどうかというと、そうは言えないと思います。

私が自分の症状を自覚してケアを求めた時、性暴力の相談するところに連絡をしてみましたが、大体被害から時間が経ちすぎていて特に対応はしてもらえませんでした。

民間のカウンセリングを紹介してもらったけど、初回から10000円かかると言われて、すでに仕事を休みがちだったので難しいと感じました。(その後別の友人に心療内科を紹介してもらって、無事病院やカウンセリングは受けられています)

こういう情報も、やっぱり自分で結構連絡したり探さないともらえなかった。こういうのもケアの一つだと思うのですが、じゃあ榊氏への告発から今日まで、誰かがそれを教えてくれたかと言われたら全くありませんでした。

榊氏は逮捕されましたが、私や他の被害者の方の生活はずっと続いていきます。もちろん、そういう人が安心して働ける場所をということで先日のクラファンをした部分はありますが、それだけじゃ全然足りていないと思います。

行政にももっと性暴力でPTSDになった被害者への支援が欲しいと思うし、「社会を良くしていこう」と考えている人たちも、それと同じくらい被害者のことを置いてけぼりにしない、ということをきちんと心に置いてほしい。

一番助けてほしいのは率直に生活費です。が、それが難しいのは重々承知しています。
だからと言って諦めずに、どういうケアや救済ができるのかを考えてもらいたいんです。
例えば働けない人が多いのだから、安心して働ける場所を提供するとか、給付金をもらいながら職業訓練が受けられるところにPTSDの患者として配慮がある枠を作るとか。

こういうことに困っているんです、こういう状況なんです、と言い続けることに疲れ果てました。言っても届かないことが多いし、「支援者」と反りが合わないと結局邪魔者扱いとか、「あの人は被害の影響でおかしくなってるから」と取り合ってもらえないことも多い。

冒頭で紹介した知乃ちゃんのレターのように、本当は私も怒りたい。でも今は、怒る気力もないし、怒る勇気もない。怒ったら「あの人は応援できない被害者」というレッテルを貼られて終わる。疲れている。

どうか皆さんからも、こういう問題提起をしていってもらえませんか。私は現状を伝えるだけでちょっといっぱいいっぱいかもです。そのために運動的なことをするとかロビイング活動?をするとか、今は体調のこともあり難しい。元気な人にお願いしたいです。

どうか、被害者を置いてけぼりにしていかないでください。

よろしくお願いいたします。

石川優実

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